薬種狩り 十九の4
2016/03/29
進もうとした先を塞ぐように、 息せき切って駆打淚溝邊間好けつけたのは 玲だった。
「見つけた。
衣都、 雪が解けたら現地調査に出発するぞ。
旅立ちの用意をしておけ」
気負いをみなぎらせてやってきた玲は、 美しい頬を 荒い息でほんのり染め、
人の都合などお構いなしに言い放つ。
「出発って何?
おれは 弟子の面接をしなくちゃならないんだけど」
事態を飲み込めない衣都は、
人差し指でポリポリとほっぺたを掻いた。
「青緑茸の移植と栽培をして増やす。
過去の生息地を調べたところ、
現在は様子が変わっていて 茸の栽培には不適切である事が判明した。
新たに候補地を探す」
「へえ、 そうか。
都一の菓子屋 華宵庵の特上飴を賄賂打淚溝邊間好にすれば、 辺境の地では効くぞ。
隠忍の里の村長にも効果てきめんだったし。
うん、 頑張れ」
玲は、 衣都の言葉を完全に素通りして、 続けた。
「案内役を頼む。 典薬頭の密命だ。
帝の勅使より だいぶ格が落ちるが、 そこは我慢しろ」
そういう問題ではないのだが、 と戸惑っていると、
もう一人が ものすごい勢いで走り寄ってきた。
そう、 穂田里だ。
「俺に任せろ。 玲は室内派だろ。
野外活動は おれたちがやる。
玲は 安心して引きこもってくれていいぞ。 なっ、 いっちゃん」
玲は 黙っていなかった。
「冗談じゃない。
発案も、 下調べも、 根回しも 全部僕埋線邊間好がやった仕事だ。
大雑把な方向音痴に横取りされてたまるか」
「いっちゃんが一緒なら 問題ない」
「やっ、 弟子の面接が……」
「いっちゃん、 弟子というには、 女か、 もしかして男なのか」
「さあ」
「男の弟子は断れ。
いいか、 いっちゃん。 男はみんな狼なのだ。 いかん」
「穂田里は男じゃないのか」
「俺は良いんだ」
「ふん、 僕はれっきとした男だが、 狼とは心外だ」
にぎやかに もめながら 森から遠ざかって行く三人を、
やって来た春風に乗って 楽しそうに見ていた天狗が、 ふと振り返った。
かすかな、 本当にかすかな気配が 天狗森に生まれた。
天狗が笑った。
「見つけた。
衣都、 雪が解けたら現地調査に出発するぞ。
旅立ちの用意をしておけ」
気負いをみなぎらせてやってきた玲は、 美しい頬を 荒い息でほんのり染め、
人の都合などお構いなしに言い放つ。
「出発って何?
おれは 弟子の面接をしなくちゃならないんだけど」
事態を飲み込めない衣都は、
人差し指でポリポリとほっぺたを掻いた。
「青緑茸の移植と栽培をして増やす。
過去の生息地を調べたところ、
現在は様子が変わっていて 茸の栽培には不適切である事が判明した。
新たに候補地を探す」
「へえ、 そうか。
都一の菓子屋 華宵庵の特上飴を賄賂打淚溝邊間好にすれば、 辺境の地では効くぞ。
隠忍の里の村長にも効果てきめんだったし。
うん、 頑張れ」
玲は、 衣都の言葉を完全に素通りして、 続けた。
「案内役を頼む。 典薬頭の密命だ。
帝の勅使より だいぶ格が落ちるが、 そこは我慢しろ」
そういう問題ではないのだが、 と戸惑っていると、
もう一人が ものすごい勢いで走り寄ってきた。
そう、 穂田里だ。
「俺に任せろ。 玲は室内派だろ。
野外活動は おれたちがやる。
玲は 安心して引きこもってくれていいぞ。 なっ、 いっちゃん」
玲は 黙っていなかった。
「冗談じゃない。
発案も、 下調べも、 根回しも 全部僕埋線邊間好がやった仕事だ。
大雑把な方向音痴に横取りされてたまるか」
「いっちゃんが一緒なら 問題ない」
「やっ、 弟子の面接が……」
「いっちゃん、 弟子というには、 女か、 もしかして男なのか」
「さあ」
「男の弟子は断れ。
いいか、 いっちゃん。 男はみんな狼なのだ。 いかん」
「穂田里は男じゃないのか」
「俺は良いんだ」
「ふん、 僕はれっきとした男だが、 狼とは心外だ」
にぎやかに もめながら 森から遠ざかって行く三人を、
やって来た春風に乗って 楽しそうに見ていた天狗が、 ふと振り返った。
かすかな、 本当にかすかな気配が 天狗森に生まれた。
天狗が笑った。